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キネマ旬報9月上旬号レビュー

ひめゆり学徒隊の悲劇は、今井正監督や神山征二郎監督の作品で詳しく描かれている。だが3名の戦死者にとどまった、ふじ学徒隊のことはまったく知らなかったので、新鮮な驚きがある。生存者の証言は、まるで昨日のように生々しい。小池勇助隊長(軍医少佐)の「みなさんは、手をあげて洞窟を出て親元に帰りなさい。絶対に死んではならない」という訓示が強く心に残る。全滅を玉砕と言い換えた軍国主義の時代に、人命を尊重した小池隊長のことをもっと知りたくなる。★★★垣井道弘

 

胸を突かれる。傷病兵の切断された手足の処置、隊長である軍医少佐の自決等の光景が、元学徒隊の口からもらされる。学徒隊の基盤、積徳高等女学校の同窓生は最年少で既に八十歳。放置すれば失われてしまう記憶の記録。編集は、証言映像をはじめ字幕、ナレーション、写真、記録フィルム、新撮映像を一つの筋へ統合することを重視し、コンパクト且つ明瞭だ。証言者個々人の視点、喋りのリズム、話しの組み立て方、表情の変化などの記録をより生かした長編版があれば、と心ひかれる。★★★寺岡ユウジ

 

酸鼻を極める記録映像と凄絶な体験談を畳み掛ける構成により、心の準備なしで見始めるとショックを受ける。沖縄本土決戦について、今はおばあさんとなった元学徒隊員たちの証言は、病院壕の地獄絵図を描写する口調が淡々としているだけに、その落差の衝撃が大きい。ふじ学徒隊の死亡者が少なかった理由となる、指揮した小池勇助隊長の興味深い人物像や、死亡した三人の生徒の姿は、証言者の振り返る記憶が少女らしいゆえに生々しく喚起される。それなのに沖縄の海はなんと澄んだ青!★★★真魚八重子

 

8/22以降の「ふじ学徒隊」上映日程

~8/24(金)11:30~ 大阪十三 シアターセブン(06-4862-7733)

8/26(日)~28(火)15:00~ 東京渋谷 アップリンクファクトリー(03-6825-5503)

 

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平和を祈って

「平和を祈って」
(積徳高等女学校昭和20年卒記念誌)上原利子、小波津照子、田崎芳子らが中心となって編集、1993年に出版された元学徒隊ら渾身の戦争体験集。この本が映画の基となった。